税理士として独立するまでの流れは?必要な費用や成功するコツを紹介

税理士として独立するまでの流れは?必要な費用や成功するコツを紹介

税理士は独立開業ができる職業として興味をもつ人や、税理士試験に合格したら独立したいと考えている受験生もいるでしょう。しかし「税理士として独立するまでの手順を知らない」、「開業しても成功できないのでは」と不安に感じるかもしれません。

本記事では、税理士として独立開業するまでに必要なステップや流れを紹介します。用意しておくべき初期費用や独立して成功するコツも解説しているので、ぜひご覧ください。

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税理士として独立するまでの流れ

税理士試験に合格しても、すぐに税理士として業務ができるわけではありません。実務経験を経て、税理士名簿への登録が必要です。試験の合格から開業に向けての準備まで、順番に解説します。

税理士試験に合格する

税理士になるには、税理士試験に合格して2年以上の実務経験を積むのが一般的なルートです。

税理士試験は必須科目を含めた11科目のうち、5科目に合格すると税理士資格を取得できます。しかし、各科目の難易度が高いため、5科目に受かるのは容易ではありません。

ただし、合格点に到達した科目は生涯有効となる「科目合格制」が採用されています。一度の試験で5科目を受験する必要はなく、数年かけて合格を目指すのが一般的です。しかし、5科目の合格までに平均して10年ほどかかるというデータもあるので、長期戦を覚悟しておきましょう。

ちなみに、令和5年度の税理士試験から受験資格が緩和され、必須科目の簿記論と財務諸表論は誰でも受験が可能となりました。1科目でも合格していれば履歴書に書けるので、就職や転職でもアピールできます。

実務経験を積む

税理士試験に合格したらすぐに税理士として事業を開始できるわけではなく、日本税理士会連合会が管理する税理士名簿への登録が必要です。

しかし、通算して2年以上、租税または会計に関する事務などに従事した期間がなければ登録できません。そのため、試験勉強をしながら税理士事務所で働いて、実務経験を積む人も多くいます。

ただし、勉強と仕事を両立させるには事務所選びが重要です。長時間労働や休日出勤が頻繁に発生する事務所であれば、勉強時間が少なくなり合格は遠のくでしょう。

一方、試験前休暇制度や教材費負担など、資格取得を支援する事務所もあります。応募する際は求人情報をよく確認しましょう。

登録申請をする

試験に合格して2年以上の実務経験を積み、税理士登録に必要な要件を満たしたら登録申請をしましょう。必要事項を記入して提出すると面接や調査が行われ、その結果をもとに登録の適否が決定されます。

必要書類や記入方法、詳しい流れなどは日本税理士会連合会のサイトをご確認ください。

開業資金を貯める

事業を開始するには、開業資金が不可欠です。事務所の賃貸料やOA機器の購入、広告費などさまざまな費用が発生します。

短期間でまとまったお金を用意するのは大変なので、試験勉強をしながらコツコツを貯めておきましょう。事業が安定するまでの生活費も考慮して、多めに準備しておくと安心です。

ただし、税理士は初期投資が少なくても開業しやすい業種なので、心配しすぎる必要はありません。開業するまでにかかる具体的な費用については後述しているので、このまま読み進めてください。

開業に向けて準備を進める

税理士登録が完了して、ある程度の資金を用意できたら、開業に向けての準備は整ったといえます。ただし、実際に行動する前に、自分が独立して何をしたいのか考えることが最も重要です。

税理士はお金に関する業務という意味では幅が広く、いわば何でもできる仕事です。だからこそ自分が何をやりたいのか、得意なことやターゲット層などを最初に定めないといけません。

事務所のコンセプトや方向性などがある程度決まったら、以下の準備を進めましょう。

  • 備品の購入
  • 立地選定
  • 採用活動(スタッフを雇用する場合)
  • 営業ツールの選定

税理士が独立開業するまでにかかる費用

独立開業するまでにかかる費用は下記のとおりです。

  • 税理士登録費用・会費
  • 事務所の賃貸料
  • パソコンやオフィス用品費用
  • 税務・会計ソフト費用
  • 名刺や広告宣伝費用

目安金額や費用をなるべく抑えるコツも紹介しているので、チェックしてください。

税理士登録費用・会費

税理士登録をする際には登録費用と税理士会への入会費・年会費に加えて、支部への年会費もかかります。以下の表は、東京税理士会とその支部を例に、必要な費用をまとめたものです。

項目金額
登録免許税6万円
登録手数料5万円
東京税理士会入会金:4万円
会館建設費:2万円
年会費:8万1,000円(6,750円×月数)
各支部の年会費3万6,000~6万5,000円
参照:日本税理士会連合会「税理士登録の手引」

税理士会は各地方のブロックやその下に位置する支部など、細かく組織が分かれており、ブロックと支部の双方に会費を支払います。登録費用や入会金は一度きりですが、年会費は毎年支払うのでそれなりの金額となります。

税理士会の年会費は区域によって異なり、福井県が属する北陸税理士会の年会費は9万6,000円です。各支部の年会費は同じ都道府県でもバラツキがあるので、事務所を構える際は確認しておきましょう。

事務所の賃貸料

独立開業をするためにオフィスを構える際の候補として、以下の3つがあります。

  • 賃貸事務所
  • レンタルオフィス
  • 自宅開業

最も初期費用・コストがかかるのが賃貸事務所です。できれば一等地に構えたいところですが、エリアによっては坪単価が高く、賃貸料だけで数十万~数百万円かかることも珍しくありません。

また、仲介手数料や火災保険に加え、法人契約の場合は約6ヶ月分の家賃を保証金として支払うケースが一般的です。通常の賃貸住宅を契約するよりも、多額の金銭を用意しなければいけません。もしも、会議室や応接室も備えるならば、その分のスペースも必要です。

事務所を借りるよりも費用を抑えたいならば、レンタルオフィスがおすすめです。賃料は数万円程度で、業務に必要な備品やインターネット環境が整っており、複合機や応接室・会議室も利用できるので初期費用を抑えられます。

敷金や礼金を求めない物件も多く、契約時の費用は共益費・入会金・初月賃料で済むケースがほとんどです。駅前のレンタルオフィスを借りれば、クライアントにとっても好都合でしょう。

コストを最小限にしたい場合は、自宅開業も選択肢の一つです。敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用が不要なので、金額を抑えられます。

在宅で業務をすれば職場までの移動時間がかからないので、時間も有効に使えます。しかし、仕事とプライベートのメリハリがなくなる可能性が高く、住所を公開することに不安を感じる方にはおすすめできません。

オフィス選びは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて検討しましょう。最初は初期費用を抑えるためにレンタルオフィスを利用して、事業が軌道に乗ってきたら賃貸事務所に移転するのも一つの方法です。

パソコンやオフィス用品費用

業務をするためのパソコンや複合機のほかに、机と椅子などの設備も必要です。さらに書類を保管するファイルやキャビネットなど、一般的なオフィスに必要なものを想定して揃えましょう。

とくに税理士は顧客の機密情報を多く扱うため、ウイルス対策ソフトや鍵をかけられる金庫や棚なども用意しておくと安心です。情報漏洩は信用問題に関わるので、セキュリティ対策は万全にしましょう。

税務・会計ソフト費用

税理士業務も電子化やIT化が進んでおり、税務や会計ソフトは欠かせないツールです。近年では、買い切りのパッケージ型以外に、月額制のクラウド型も主流となっています。

使い慣れているものや、想定される案件に応じて適切なものを選びましょう。

名刺や広告宣伝費用

独立して新規クライアントを獲得するためには、営業や宣伝は必須といえます。たとえば、名刺の作成やWebサイトの開設、インターネットでの広告費用などは必要になるでしょう。

ただし、ホームページの作成は外注すれば数万円~数十万円かかりますが、無料のサイトを利用して自分で作成すれば費用は発生しません。工夫次第で、コストを抑えることも可能です。

税理士が独立するメリット

独立開業のメリットの一つに、自由度の高さが挙げられます。活動時間に制限がなく、拠点や提供するサービスなどはすべて自分の意思で決められます。

やりたいことや、支援したいと思うお客様とお付き合いできる点は、独立開業ならではの魅力です。

また、自身の利益が収入に直結するので、所属税理士よりも高い報酬を得られる可能性があります。税理士業務以外にも、セミナー講師や執筆活動などを行えば仕事の幅も広がります。

税理士が独立するデメリット

税理士以外にも共通する内容ですが、独立開業のデメリットはリスクと責任がともなう点です。顧客がいなければ収入が発生しないので、事業が安定せずに廃業する可能性も考えられます。

しかし、他業種と比べると税理士は成功しやすいビジネスだといえます。なぜなら、顧問料という安定した月額報酬をもらえるからです。

社労士や弁護士と顧問契約する事業者はまだまだ少ないですが、税理士と顧問契約するのは当たり前だと考える事業者は多くいます。また、司法書士や行政書士などの他の士業は、顧問料をもらえるケースは少ない傾向にあります。

税理士は収入の見通しが読みやすいので、独立に対し過度な不安を感じる必要はありません。

税理士が独立して成功するコツ

「税理士として独立しても成功するのは厳しい」、「開業しても失敗するのではないか」と不安に感じる人もいるでしょう。たしかに、全員が成功するとは限りませんが、成功するコツを知っていれば失敗するリスクを軽減できます。独立にネガティブな考えを持っている方は、ぜひご確認ください。

得意分野を把握する

競合との差別化を図るためにも、自分の得意領域を把握して専門分野を明確にしておきましょう。事業継承や相続問題、飲食やITなどの業種に特化して戦略を構築するのも一つの方法です。

質の高いサービスを提供できると、顧客からの信用にもつながります。すべてを手広く担当するよりも、ある程度の領域に絞るのがおすすめです。

営業スキルを身につける

クライアントがいなければ事業が成り立たないので、新規顧客の獲得は必要です。ただし、税理士に営業マンのような能力は求められません

たしかに、営業できる人材は貴重ですが、通常のコミュニケーションができれば十分です。既存顧客から紹介してもらえるケースも多いため、日ごろから質の高いサービスを提供して顧客満足度を高めることが重要です。

薄利多売をしない

顧問料が高すぎると顧客獲得は難しくなりますが、安すぎても労働量に見合った対価が得られず利益が残りません。はじめに顧問料を安く設定しすぎると、薄利多売の状態から抜け出せない恐れがあります。

適切な料金設定にするためには、同様のサービスを提供する事務所をインターネットで検索し、費用相場を調べるのがおすすめです。格安の料金で依頼を受けていると、他の案件や営業活動の時間が取れずにチャンスを逃す可能性があります。適正価格を把握して、料金を決めましょう。

入念に準備をして税理士の独立開業を成功させよう

税理士として独立開業するためには、2年の実務経験と税理士登録が必要です。税理士試験に合格すれば、すぐに独立できるわけではないので、注意してください。

独立開業するまでの資金は多めに用意しておくことが望ましいですが、方法次第では金額を抑えられます。税理士ほど初期投資が少なく開業できる業種は少ないでしょう。

独立開業をすれば責任がともないますが、自分がやりたいことや支援したいと思うお客様に寄り添えます。また、仕事量と収入が比例しやすいため、努力次第では大きな成果を得られます。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

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この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

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