税理士試験の簿記論とは?合格率や勉強時間、勉強方法のコツを紹介

「税理士試験の簿記論ってどのような科目?」、「日商簿記とどちらが難しいの?」と悩む方もいるかもしれません。簿記を取得しているので、キャリアアップのために簿記論に挑戦しようと考える人もいるでしょう。

本記事では、税理士試験の簿記論の概要や合格率について解説します。財務諸表論との違いや、勉強目安時間も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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税理士試験の簿記論とは?

税理士試験の簿記論とは?

そもそも簿記とは、会社の日々の取引を帳簿に記録するために用いるルールです。その記録や集計方法などのルールを学習するのが簿記論です。

簿記の知識は税理士にとって不可欠で、他の科目を学ぶ際にも求められます。また、税理士試験で簿記論は財務諸表論とともに必須科目に指定されているので、避けて通ることはできません。

税理士試験の簿記論の概要

税理士試験の簿記論の概要

税理士試験の簿記論について紹介します。

  • 簿記論の受験資格
  • 簿記論の出題形式
  • 簿記論の合格率
  • 簿記論の勉強時間の目安
  • 簿記論と財務諸表論との違い

受験を考えている方は、ぜひご覧ください。

簿記論の受験資格

税理士試験の受験資格は令和5年度の試験から変更され、会計科目(簿記論と財務諸表論)は誰でも受験が可能となりました。受験資格が原因で挑戦を諦めていた人にとってはチャンスです。

しかし、その他の科目は受験資格が定められているため、確認しておきましょう。

(1) 学識による受験資格

 

大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、

社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者

括弧




大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※1)を

1科目以上含む62単位以上を取得した者

一定の専修学校の専門課程(※2)を修了した者で、

社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者

司法試験合格者
公認会計士試験の短答式試験に合格した者(※3)

(2) 資格による受験資格

日商簿記検定1級合格者(※4) 括弧


全経簿記検定上級合格者(※5)

(3) 職歴による受験資格

法人又は事業行う個人の会計に関する事務(※6)に2年以上(※7)従事した者 括弧


銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上(※7)従事した者
税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上(※7)従事した者

※1 「社会科学に属する科目」には、改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「法律学に属する科目」に該当していた、法学、法律概論、日本国憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法等、また、「経済学に属する科目」に該当していた、(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済等の科目のほか、文系学部・理系学部を問わず、多くの学生に履修の機会があると考えられる、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等の科目が該当します。 また、その科目が「専門科目」ではなく、いわゆる「教養科目」や「共通科目」として位置づけられている場合であっても対象となります。⇒詳細はQ&Aを参照してください
※2 一定の専修学校の専門課程とは、1修業年限が2年以上2課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上であるものをいいます。 ⇒詳細はQ&Aを参照してください
※3 平成18年度以降の合格者に限られます。
※4 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
※5 公益社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限られます。)
※6 複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成事務等をいいます。
※7 異なる勤務先等の職歴は、通算して2年以上となれば受験資格があります。

引用元:国税庁「税理士試験受験資格の概要

簿記論の出題形式

簿記論は個別問題と総合問題の、大問3つで構成されています。内容はすべて計算問題で、試験時間は120分と長めですが、すべて解ききるのが難しいほどボリュームが多い点が特徴です。

資料や注意事項をもとに問題を解くため、計算スキルはもちろん、事務処理能力や応用力が求められます。

簿記論の合格率

過去5年間の合格率を紹介します。

受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
2022年度12,8882,96523.0
2021年度11,1661,84116.5
2020年度10,7572,42922.6
2019年度11,7842,05217.4
2018年度11,9411,77014.8
出典:国税庁「税理士試験

簿記論は日商簿記を所有している人がキャリアアップする場合や、はじめて税理士試験に挑むときに選択する人が多い科目でもあります。そのため、11科目のうち受験者数がもっとも多い点が特徴です。

また、税法科目の合格率は10%台ですが、簿記論は20%を超える年度もあるので比較的高めです。しかし、合格しやすいわけではなく、長年苦労する人もいます。

簿記論の勉強時間の目安

簿記論の勉強時間は、500時間ほどが目安です。

ただし、計算問題が中心なので、計算が苦手な人はさらに時間を要するでしょう。反対に、日商簿記を取得している人は学習内容が重複する部分もあります。

日商簿記3級で約20~30%、2級で半分程度、1級では約90%を学習済みと言われているので、勉強時間を少し削減できるかもしれません。

その他の科目の勉強時間も紹介するので、比較対象としてご活用ください。

科目勉強時間の目安
簿記論500時間
財務諸表論500時間
所得税法1,200時間
法人税法1,200時間
相続税法1,000時間
消費税法600時間
酒税法300時間
国税徴収法300時間
住民税400時間
事業税400時間
固定資産税500時間

簿記論と財務諸表論との違い

簿記論と財務諸表論の違いを説明するために、財務の業務内容を先に紹介します。財務の業務は、経理が作成した帳簿や財務諸表をもとに、会社の資金調達や予算管理を行います。

そのため、社外の人間に経営状況を提示するために、財務諸表の作り方・理論をまとめた科目が財務諸表論といえます。

2つの違いは、簿記論は日々の取引を正確に「記録」する方法、財務諸表論はその帳簿を第三者にわかるように「表示」する方法を学習するイメージです。

財務諸表論は簿記論と同じく税理士試験のなかでは必須科目に該当するので、簿記論についで受験者数が多い科目です。財務諸表論の合格率をまとめたので、ご覧ください。

受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
2022年度10,1181,50214.8
2021年度9,1982,19623.9
2020年度8,5681,63012.6
2019年度9,2681,75318.9
2018年度8,8171,17913.4
出典:国税庁「税理士試験

財務諸表論は計算問題だけでなく、理論問題も出題されます。簿記論と親和性・関連性が高いため、2科目同時に受験する人も多くいます。

税理士試験の簿記論を科目合格しておくメリット

税理士試験の簿記論を科目合格しておくメリット

税理士試験では、合格した科目は生涯有効となります。簿記論に合格していれば履歴書に書けるので、就職や転職でアピールできます。

簿記2級の取得を条件に人材を募集する一般企業や税理士事務所もあるので、簿記論に合格していれば十分に価値は高いといえます。

税理士試験の簿記論が難しいといわれる理由

税理士試験の簿記論が難しいといわれる理由

簿記論は問題数が多いので、計算スピードが重要です。学習範囲も広く、複式簿記の原理や計算方法、帳簿組織や商業簿記を理解しなければいけません。

さらに、数字のセンスが求められる科目のため、苦労する人もいるでしょう。簿記や会計の知識は税理士業務のベースとなるため、簿記論に長年合格できなければ道を考えなおすのも一つの手です。

税理士試験の簿記論の勉強方法

税理士試験の簿記論の勉強方法

簿記論の勉強方法を紹介します。これから勉強をはじめる人も、すでに開始している人もポイントをチェックしてください。

反復学習をする

簿記論は問題数が多く、試験時間内にすべての問題に解答するのが難しいので、問題演習を中心に勉強して計算スピードを上げることが重要です。何度も演習を重ねて論点毎に自分なりの解き方、すなわち「型」をつくるとよいでしょう。

開始、期中、期末の仕訳の流れを理解して、自分がどの仕訳の問題を解いているのかを把握するのがポイントです。簿記論は暗記が得点に直結する科目ではないので、反復して計算に慣れましょう。

採点・解答の確認をする

問題を解いて終わるのではなく、必ず解答・解法を確認してください。間違えた問題は必ず復習して、同じミスを繰り返さないようにしましょう。

とくに過去問を解く際は、時間を測るのがおすすめです。ペース配分がわかるだけではなく、普段から試験の雰囲気を演出することで、本番の緊張も和らぐでしょう。

正確さと素早さを大切にする

ボリュームが多く基本的に全問解けないので、ケアレスミスをなくすことが重要です。他の受験生が得点源にしている箇所を落とすのは非常にもったいないです。

また、簿記論は計算力だけではなく国語力も大事だといえます。問題文で何が問われているかを正確に読み取り、一発で理解しましょう。

難問に時間をかけすぎない

合格点は満点の60%以上とされているので、全問正解を目指す必要はありません。むしろ、解ける問題と解けない問題の取捨選択が大切です。

すべての問題を解くのは難しいかもしれませんが、ライバルが正解できる問題は自分も得点できなければいけません。反対に、他の受験者が落とす問題は、自分も不正解で構わないと思いましょう。

完璧主義になって最初から全問クリアしようと思うと、時間切れになる可能性があります。過去問の正答率を参考にしながら、難問を判断するスキルを身につけましょう。

税理士試験の簿記論は独学で合格できる?

税理士試験の簿記論は独学で合格できる?

簿記論を独学で合格するのは大変ですが、不可能ではありません。簿記論であれば税法の改正の影響を受けにくく、テキストもそれなりに販売されているので、市販教材だけで合格できる可能性はあります。

しかし、勉強量も多く難易度も高いため、簡単に合格できる試験ではありません。初学者であれば、先に日商簿記3・2級から勉強して、基礎知識を身につけてから簿記論に挑戦するとよいでしょう。

税理士試験の簿記論と簿記1級はどちらが難しい?

税理士試験の簿記論と簿記1級はどちらが難しい?

簿記1級の統一試験の過去5回分の合格率は以下のとおりです。

実受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
164(2023.6.11)9,2951,16412.5
162(2022.11.20)9,8281,02710.4
161(2022.6.12)8,91890210.1
159(2021.11.21)9,19493510.2
158(2021.6.13)7,5947469.8
出典:日本商工会議所「1級受験者データ(統一試験)

簿記論の合格率は14~20%台で、簿記1級の合格率は9~12%台です。合格率だけを見ると簿記1級のほうが難しいと思うかもしれませんが、そうとは限りません。日商簿記1級と簿記論は、以下の点が異なります。

  • 年間の実施回数
  • 受験資格

まず、税理士試験は年に1回しか行われませんが、簿記1級は年に3回開催されるので挑戦のしやすさが異なります。

また、受験資格が違う点にも触れる必要があります。簿記論は令和5年から受験資格が撤廃されましたが、以前は学識・資格・職歴のいずれかを満たさなければ受験できませんでした。

学識要件を満たしていない人は、資格による受験資格の一つに「日商簿記検定1級の合格者」が含まれていたため、簿記1級を取得してから税理士試験に挑む人も多くいました。しかし、日商簿記1級は受験資格が設けられていないため、誰でもチャレンジが可能です。

つまり、簿記論のほうが受験者のレベルが高い傾向にあったので、合格率だけで難易度の比較はできません。ちなみに、出題範囲は被る部分が多いため、簿記1級を取得していれば簿記論の勉強時間は短縮できるでしょう。

税理士試験の簿記論の合格を目指そう

税理士試験の簿記論の合格を目指そう

簿記論は税理士試験のなかで必須科目に指定されているので、避けられません。学習量や出題数が多く、計算スキルも求められるため、しっかりとした対策が必要です。

しかし、令和5年度の試験から財務諸表論とともに受験資格が撤廃されたので、誰でも挑戦できるようになりました。これまで受験を諦めていた人にとってはチャンスです。科目合格しているだけでも履歴書に書けるため、十分に価値はあります。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

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また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

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この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

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