税理士に将来性はある?AIの影響や活躍できる人材の特徴を紹介

税理士に将来性はある?AIの影響や活躍できる人材の特徴を紹介

「税理士資格を取得すれば一生安泰」だと思う人もいれば、「AIに代替されるので将来性が無い」と思う人もいるかもしれません。

本記事では税理士に将来性が無いと言われる理由を掘り下げつつ、実際に将来性は無いのかについて解説します。長く活躍できる人の特徴も紹介しているので、これから税理士を目指そうか悩んでいる方は参考にしてください。

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税理士の将来性が心配される理由

そもそも、どうして税理士の将来性が心配されるようになったのでしょうか。理由を下記の3つにわけて説明しつつ、税理士の需要と供給についても紹介します。

  • AI・ITツールの普及
  • 中小企業の減少
  • 税理士登録者数の増加

AI・ITツールの普及

理士の将来性が心配される原因の一つに、AIやITツールの普及が関係しています。

2014年にAIの研究者であるマイケル・A・オズボーン博士が「IT技術とAIの進歩で、今ある職業のうち半分が10年後になくなる」旨を発表しました。そのなかに「簿記・会計・監査の事務員など」の記載があったため、税理士が危ういと感じる人が増えたのでしょう。

また、インターネットや本で情報を入手しやすくなったのも要因の一つだといえます。わざわざ税理士に依頼しなくても、自分自身で納税申告ができると考える人が増えているのではないでしょうか。

中小企業の減少

税理士のクライアントは中小企業や小規模企業、個人事業主がほとんどですが、企業が減少傾向にあるのも税理士の将来性が心配される理由の一つです。

実際に、国内の企業数は下記のように推移しています。

企業数の変化
引用:中小企業庁「企業数の変化
企業数の変化
年度企業数合計小規模企業中規模企業大規模企業
2006年421万366.3万53.5万1.2万
2009年421万366.5万53.6万1.2万
2012年386万334.3万51.0万1.1万
2014年382万325.2万55.7万1.1万
2016年359万304.8万53.0万1.1万
参照:中小企業庁「令和元年度(2019年度)の中小企業の動向

ちなみに「令和3年経済センサス‐活動調」によると、2021年は368.4万企業なので少し盛り返しています。しかし、もう一つ注意しなければいけないのが経営者の高齢化です。

中小企業庁の「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人です。そのうち、およそ半数は後継者が決まっておらず、このままでは廃業が急増する可能性があると報告されています。

中小企業・小規模企業の減少と後継者不足による廃業リスクから、税理士の顧問先がなくなると不安に思われているのでしょう。

税理士登録者数の増加

クライアント先となる小規模事業者などは減少している一方で、税理士の登録者数は年々増加しています。よって、需要と供給のバランスが合わず、競争が激しくなると予想する人もいます。

下記の表は、直近5年間の税理士登録者数です。

過去5年間の税理士登録者数
年度税理士登録者数
2019年度7万8,795人
2020年度7万9,404人
2021年度8万163人
2022年度8万692人
2023年度8万856人
国税庁:「税理士制度

ちなみに、弁護士や公認会計士は税理士試験に合格しなくても税理士登録が可能です。また、税務署に一定期間勤務した場合も、勤続年数に応じて税理士試験科目が免除されます。

税理士試験の受験者数は減少しているので、上記の方々が税理士登録していることを表しています。

税理士に「将来性がある」と言える理由

税理士の将来性が心配される一方で、税理士に将来性はあると言える理由も明確にあります。以下の3つにしぼって解説するので、チェックしてください。

  • 税制が複雑化している
  • 税理士業界が高齢化している
  • 副業解禁で顧客が増加する可能性がある

税制が複雑化している

日本国内の税制は年々複雑化しているので、インターネットの情報だけで太刀打ちするのは難しくなっています。たとえば、少し前だと消費税の軽減税率、最近ではインボイス制度が挙げられます。

普通に生活をしている人には関係ないと思うかもしれませんが、企業や事業者は税金に関する計算や手続きが増えるので負担が大きくなります。正しい知識がなければ誤って申告する恐れもあるので、税制が複雑化するほど税理士の必要性は高まっていくでしょう。

また、税法は毎年改正されるのが一般的ですが、AIが完璧に理解して瞬時に対応できるとは限りません。AIの普及や税法の情報を入手しやすくなったといっても、税理士の活躍の場は減るどころか増していく可能性があります。

税理士業界が高齢化している

少々データは古いですが、2014年に日本税理士会連合会が発表した税理士の年齢層は下記のとおりです。

税理士の年齢層の割合
税理士の年代別割合
年代割合
20代0.6%
30代10.3%
40代17.1%
50代17.8%
60代30.1%
70代13.3%
80代10.4%
出典:日本税理士会連合会「データで見る税理士のリアル。

60代以降の税理士が全体の半分以上を占めており、20~30代の税理士はわずか1割程度です。税理士業界の高齢化が叫ばれているので、これから参入する人はチャンスです。

税理士業界は実力で評価されやすい職業なので、年齢に関係なく知識やスキルを身につければ活躍できます。デジタルに抵抗が無い方は、AIやITツールを使いこなせないベテラン税理士と差別化を図れるでしょう。

副業解禁で顧客が増加する可能性がある

2018年から副業解禁の動きが目立ち、本業以外から収入を得る人も増えています。しかし、副業による所得が20万円を超えると、確定申告をしなければいけません。

いくら会計ソフトが普及していても、なじみが無い人にとって確定申告は容易ではありません。プロに相談するのが確実だと考え、税理士に相談・依頼するケースはあるでしょう。

また、副業をきっかけにフリーランスとして活躍する人も珍しくなく、実際にフリーランスの数は年々増加しています。

フリーランスの推移
引用:Lancers「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
フリーランス人口の推移
年度フリーランスの人口
2018年1,151万人
2019年1,118万人
2020年1,063万人
2021年1月1,518万人
2021年12月1,577万人

フリーランスは確定申告が原則必須なので、顧客が増える可能性は大いにあります。

税理士として長く活躍するポイント

競争の激化やAIの普及により、税理士資格を持っていても生き残れるとは限りません。他社と差別化を図って、多くのクライアントから必要とされる税理士になることが大切です。

税理士として長く活躍できるポイントを以下の3つに分類して解説します。

  • ITツールを活用する
  • 専門性を高める
  • 顧客が真に望んでいることを理解する

ITツールを活用する

AIやITツールを活用して単純作業の労働時間を減らせば、他の付加価値の高い業務に時間を割けます。結果的に、顧客満足度の向上につながるでしょう。

低付加価値業務でもAIやITツールを使って効率化すれば、低単価でも高い収益性が出せると考えています。

税理士業界の潮流としては、記帳代行に代表される手間代行業は低付加価値業務であるから受託せず、高付加価値業務であるコンサルサービスをシフトしていく流れだと感じています。

しかし、顧問税理士が記帳業務を請け負わず、事業者が本業ではない記帳に時間を使うのは良いとは思えません。

会計事務所はクラウド会計を用いて記帳代行業務を効率化して低単価でも収益を出し、事業者は記帳する時間を本業に割く

上記の関係性が当事務所の目指している姿です。

ただし「記帳代行などの手間代行業は低付加価値業務だから請け負わない」のは、決していいとは思いません。AIやITツールを使って効率化すれば、たとえ低単価だとしても高い収益性を出せます。

顧問税理士が記帳業務を受託しないために、事業者が本業ではない記帳に時間を消費するような状況は避けるべきです。

会計事務所が記帳代行業務を効率化して低単価でも収益を出し、事業者は記帳する時間を本業に割くのが目指すべき姿だと考えています。

専門性を高める

深い知識を身につけて専門性を高めれば、顧客からの信頼も勝ち取り他社との差別化も図れます。たとえば、以下の内容は、今後も依頼数が増える可能性があります。

  • 相続、デジタル資産
  • 事業継承、M&A
  • 国際税務

少子高齢化が進む日本では相続の分野は需要が高く、最近では亡くなった方がデジタル資産を保有していた場合の手続きも増えています。

また、経営者の高齢化にともない事業継承の問題も拡大しています。以前までは身内から後継者を探すのが中心でしたが、最近ではM&Aで承継するケースも増えてきました。

他にも、グローバル化が加速している影響で、国際税務や語学の知識もニーズがあります。時代の流れに合わせて求められる内容は変わっていくので、知識やスキルを磨き続けられる税理士は活躍し続けるでしょう。

顧客が真に望んでいることを理解する

相手のニーズを読み取りアドバイスする業務は、たとえAIが普及しようとなくなりません。むしろ、ITツールの発展により、顧客とコミュニケーションをとれる機会は増えます。

すべてのクライアントが節税や利益を求めているわけではありません。本当に望んでいることを理解して想像・提案できる税理士は、今後も重宝されるでしょう。

将来性を危惧される今こそ税理士試験に挑むチャンス

日本の人口は年々減っているため、たしかに中小企業や後継者の数は減っています。ただし、業界の市場規模は下記のとおり推移しており、ニーズは減るどころかむしろ増加していることがわかります。

下記の公認会計士事務所と税理士事務所の売上高をまとめたデータをご覧ください。

会計事務所 売上高
会計事務所売上高の推移
年度売上高
20131兆4,549億円
20141兆5,067億円
20151兆6,650億円
20161兆6,275億円
20171兆6,514億円
出典:総務省「サービス産業動向調査

なお「令和3年経済サンセス-活動調査」によると、令和3年の会計士事務所の売上高は1兆9,022億円でした。しかし、税理士試験の受験者数は年々減少しています。実際の受験者数や税理士試験の概要を確認しましょう。

税理士試験の受験者数が減少している

過去5年間の税理士試験の受験者数をグラフと表にまとめたので、ご覧ください。

税理士試験 受験者数
過去10年間の税理士試験の受験者数
年度受験者数
20124万8,123人
20134万5,337人
20144万1,031人
20153万8,175人
20163万5,589人
20173万2,974人
20183万850人
20192万9,779人
20202万6,673人
20212万7,299人
20222万8,853人
出典:国税庁「税理士試験

2012年から2022年までに、半分ほど受験者数が減っています。

また、税理士業界は売り手市場で、令和4年度の有効求人倍率は2.31倍です。ライバルが少ない今こそ、税理士試験に挑むチャンスだといえます。

受験資格が緩和された

税理士試験は会計2科目と税法3科目の計5科目が合格点に到達すれば、税理士試験に合格となります。ただし、一度の試験で5科目に合格する必要はなく、合格点に到達した科目は生涯有効となる科目合格制が採用されています。

科目合格制については、以下の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。

関連記事:税理士 科目合格

以前までは学識・職歴・資格のいずれかの受験資格を満たさなければ、税理士試験は受験できませんでした。そのため法学部か経済学部の卒業生、もしくは日商簿記1級の取得者以外は受験するのが難しい状況でした。

しかし、税理士試験の受験資格が令和5年度の試験から緩和され、簿記論・財務諸表論は誰でも受験が可能です。その他の科目は受験資格が必要ですが、1科目に合格しているだけでも価値は高いので、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。

税理士以外の士業にも将来性はある?

税理士以外の士業にも将来性があるのか心配に思う人もいるでしょう。結論として、将来性が無いと考えられる士業はありません。

しかし、AIを活用して業務を効率化するケースは増えるでしょう。AIの活用が想定される業務と、AIでは代替できずこれからも人間の力が必要な業務をまとめました。

AIの活用が期待できる業務とできない業務
 AIで効率化できる業務AIでは代替できない業務
公認会計士定型業務非定型業務
社労士1・2号業務3号業務
司法書士登記などの事務作業提案業務
弁理士商標出願業務発明者とのコミュニケーション
不動産鑑定士データ収集相続に関する相談など

事務作業や帳簿の作成などはAIを利用する可能性が高いでしょう。しかし、クライアントとコミュニケーションをとる機会はいずれの士業も発生するので、完全になくなるとは考えられません。

税理士以外にもいえることですが、AIが仕事を奪うのではありません。AIを使いこなせる人材が、AIを活用できない人間のもとから結果的に仕事を奪っていくのではないでしょうか。

税理士の将来性は心配しすぎなくてもいい

AIの登場で「税理士に将来性は無い」という声が増えていますが、過度に心配する必要はありません。

むしろ会計事務所の売上高は年々伸びており、2016年の会計事務所の売上高は1兆6275億円ですが、5年後の2021年は1兆9,022億円です。ニーズはあるので、悩んでいる方もこれから税理士を目指してみてはいかがでしょうか。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

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この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

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