税理士になるための学部の選び方 大学時代に資格勉強を開始して、最短距離を目指そう

「将来は税理士になりたいが、大学でどの学部を選ぶべきかわからない」「すでに大学を卒業したが、今からでも税理士を目指せるのか不安」

このような悩みを抱えていませんか?

結論から述べると、学部選択は税理士になる上であまり影響しません。

しかし、大学在籍時から税理士資格の取得を意識する場合は、文系と理系でプロセスが少し異なります。

本記事では、税理士試験に関連する内容を学べる学部や、文系・理系それぞれの学部から税理士を目指す戦略について解説します。

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税理士になるためには、まずは税理士試験に合格する

税理士になるためには、まずは税理士試験に合格する

税理士になるには、2年以上の実務経験などの条件もありますが、まずは税理士試験に合格することから始まります。

税理士は税務に関する専門家であり、税理士法で定められている国家資格です。

国内でも屈指の難関資格として認知されています。

税理士試験の特徴
受験資格 制限あり
(大学・短大での履修科目や、保有資格など)
勉強時間の目安 5,000~10,000時間
合格率 1科目あたり10-20%
国内でも屈指の難関資格といえる
試験科目
  • 簿記論
  • 財務諸表論
  • 所得税法もしくは法人税法
  • 選択科目(相続税法、国税徴収法、消費税法または酒税法、住民税または事業税、固定資産税)

上記のうち5科目に合格することが必要

受験する人の特性 働きながら受験する人が多い
時間に余裕のある学生時代から受験を開始しておくと、かなり有利
学習スタイル 受験科目を選んで少しずつ受験できる
3〜5年ほどかけて長期で勝負する

税理士になるには文系・理系どちらが有利?

税理士になるには文系・理系どちらが有利?

文系・理系問わず税理士にはなれますが、大学入学前から税理士を目指すと決めている場合は、文系を選択するとよいでしょう。

文系から税理士になるプロセスと、理系から税理士になるプロセスをそれぞれ説明します。

  • 文系から税理士になるプロセス
  • 理系から税理士になるプロセス

文系から税理士になるプロセス

税理士試験の内容に直結する授業を履修しやすいのは文系なので、文系を選択すると有利です。

商学部、経営学部などでは、財務会計論、会計学、簿記論などの科目が開講されています。

大学で税理士になるためにみっちり勉強できるわけではなく、基礎的な知識を身につけられるだけですので、税理士試験を突破するだけの知識は得られません。

早めに会計や税務の科目を履修して考え方の基礎を身につけた後、大学外の専門学校に通い、税理士試験の対策ができるとスムーズです。

税理士事務所に就職して実務を学びつつ、科目合格を目指しましょう。

理系から税理士になるプロセス

理系では、税理士に関連する科目を履修できる可能性は低いです。

研究や試験で忙しくなり、勉強時間の捻出が難しいため、税理士になることを見越して大学に入学するのであれば文系より不利になります。

独学で日商簿記の勉強から開始してください。在学中に日商簿記1級まで取得し、税理士事務所に就職して働きながら資格学校に通い、税理士試験合格を目指すとよいでしょう。

令和4年からは、会計学に関連する科目の受験資格は不要です。

以前よりは、理系からでも税理士を目指しやすくなっています。

受験資格は、社会科学を1科目のみ取得すればよいことになっているため、総合大学などで文系科目を履修できる環境であれば、受験資格をクリアすることも可能です。

税法科目によりますが、試験問題の半分は計算問題ですので、その点数字に強い理系は有利ともいえます。

出典:税理士試験受験資格の概要|国税庁

長い目で見ると文理選択は税理士になるのに影響はしないと思います。
私自身が理系なので想像ですが、経営学部や経済学部の場合、税理士という資格が身近にあるため税理士を目指す動機が生まれやすいのではないでしょうか。
理系学部では税理士という職業をそもそも知らず選択肢に入っていないこともあります。

税理士を目指すための学部選びのコツ

税理士試験に早期で合格することを目指して学部を選択する場合、以下のポイントで選ぶのがおすすめです。

  • 税理士試験の受験資格に必要な単位を取れる学部
  • 税理士試験の勉強時間を確保できる学部

順に解説します。

税理士試験の受験資格に必要な単位を取れる学部

税理士の「税法に属する試験科目」を受験するためには、学識・資格・職歴などの受験資格が必要です。

学識による受験資格は、次の5つです。

  • 大学、短大または高等専門学校を卒業して、社会科学に関連する科目を1科目以上履修している
  • 大学3年生以上で、社会科学に関連する科目を1科目以上含む62単位以上を取得している
  • 一定の専修学校の専門課程を修了し、社会科学に関連する科目を1科目以上履修している
  • 司法試験合格者
  • 公認会計士試験の短答式試験合格者

出典:税理士試験受験資格の概要|国税庁

受験要件で必要とされる科目を学習できる学部を紹介します。

経営学部

ビジネス系の学部である経営学部では、企業の管理や経営手法について多角的に考察・研究します。

経営学の概論的知識、簿記・会計、社会学、経済学、法学を学べます。

大学生のうちから、企業会計システムへの理解が深められるので、税理士業務の実践に役立つ点で有利です。

商学部

商学部もビジネス系の学部で、実践的な企業の経済活動について学びます。

会計、マーケティング、人材マネジメントなどが主なテーマです。

必須科目の中に、税理士には必須の知識である会計学が含まれています。

学部での勉強内容でビジネスの流れを掴めるので、社会に出る前から会計の内容をリアルにイメージしやすくなります。

経済学部

経営学部と商学部では実践的な内容を学ぶ一方、経済学部は社会全体についての経済理論を勉強します。

ミクロ経済学・マクロ経済学を中心に、人とお金の動きや経済に関連する思想、歴史などについても研究します。

税理士試験の受験資格には、「経済学を履修した者」と記載があり、親和性が高いです。

統計学の手法を学べるので、税理士として働く際に役立ちます。

法学部

法学部では、法律の側面から問題の解決方法を学びます。

とくに税法、会社法、民法などの法律知識は税理士が知っておくべき内容なので、そこを学べる点がメリットです。

税理士試験の出題範囲と重なる分野を体系的に学習できます。

他のメイン分野である、簿記や会計学について学ぶ機会は基本的に無いため、独学で学ぶ必要があります。

税理士試験の勉強時間を確保できる学部

社会人より大学生の方が勉強時間を確保しやすいため、学生のうちから受験するとよいでしょう。

学部の勉強の合間に、勉強時間を取りやすい学部がおすすめです。

理系は実験や研究のため忙しく、教育学部も教員免許の取得のため勉強に時間を割くのは難しいかもしれません。

語学系も授業の予習と復習で忙しくなる傾向にあります。

忙しい学部の例時間を確保しやすい学部の例
理系学部
教育学部
法学部(司法試験を受ける場合)
外国語学部
経済学部
文学部
商学部
経営学部

税理士になるために学歴は必要?

税理士になるために学歴は必要?

一般的な就活と同様に、有名大学であれば大手税理士事務所への就職で有利に働く可能性が高くなります。

学歴は、採用の判断要素の一つになり得ます。

税理士として長く活躍するためには、偏差値より「資格の有無」が重要です。

資格受験要件を満たし、税理士試験に合格するために勉強することが最優先となります。

学歴より重要なのが、人間性です。クライアントからの評価が何より大切です。

若者は職歴が浅いため学歴は自頭がよいか、適性があるかどうかの判断材料の一つになると思います。勉強することが多いので、地頭がいいかどうかは重要です。
とはいえ、コミュニケーション能力(人として好かれるかどうか)も重要なので、学歴はなくても十分挽回できます。
学生のうちは実務経験の有無を気にする必要はありません。それよりも素養があるかどうかが大切です。
素養とは数字に強いこと、コミュニケーション能力、ITに強いことなどが挙げられます。
英語力はBig4などの大手税理事務所だと強みになりますが、一般的な事務所であれば関係ありません。

大学在学中から税理士試験を受験するメリット

大学在学中から税理士試験を受験するメリット

大学時代に税理士試験の全科目に合格しきる人はほとんどいませんが、学生時代から受験を開始して少しずつ合格していくことのメリットは大きいです。下記のようなメリットが挙げられます。

  • 勉強に集中しやすく、合格率が高い
  • 現役大学生の合格者は市場価値が高い
  • 1科目の合格から履歴書に書ける

順に解説します。

勉強に集中しやすく、合格率が高い

社会人になってからより学生時代の方が時間に余裕があり、勉強に集中しやすいため税理士試験の合格率も高いです。

2022年度は、大学在学中の1,463人が税理士試験を受け、436人が合格しています。

全体の合格率19.5%と比較すると、大学在学中の合格率はかなり高いことがわかります。

学生のうちに全科目合格するのは難しいにしても、社会人になって忙しくなることを見越してある程度勉強を進めておくとよいでしょう。

大学によっては、税理士資格を取得すると大学の単位として認定されることもあります。

以下の大学は、税理士資格の単位認定を公表しています。

【公立大学】

  • 香川大学

【私立大学】

  • 日本大学
  • 関西大学
  • 松山大学
  • 明海大学
  • 福岡大学
  • 東京経済大学
  • 嘉悦大学
  • 高崎商科大学
  • 産業能率大学  など

出典:国税庁「税理士試験|令和4年度(第72回)税理士試験結果」

現役大学生の合格者は市場価値が高い

一度合格した科目は生涯有効ですので、若いうちに取っておくと柔軟なライフプランを組めます。

2014年に行われた第6回税理士実態調査によると、20代で税理士資格を取得している人は全体のわずか0.6%なので、市場価値が高いです。

一般企業では会計・税務に関する知識が求められます。

銀行・保険会社で働きたい場合、かなり有利に働きます。

出典:税理士会

1科目の合格から履歴書に書ける

税理士試験は科目合格制度です。

一度に5科目全合格する必要はなく、1科目ずつ受けられます。1科目からでも履歴書に書けます。

科目合格者向けのワンランク上の求人募集も受けられるので、就活の幅が確実に広がるでしょう

1〜3科目合格者を募集している会計事務所もあり、全部合格していないと評価されないわけではありません。

可能であれば学生のうちから税理士試験に挑戦しよう

可能であれば学生のうちから税理士試験に挑戦しよう

大学入学前の学部選択の時点から税理士を志すパターンは実際のところ少なく、経営学部や経済学部などに入学してから税理士という職業を認知するか、社会人になって経理に配属された人の独立志向が高まって税理士を目指すケースが多いです。

根本的に、学部での有利不利はほとんどありません。

学生時代に学部の勉強と並行して税理士の勉強を進めることで、働きながら勉強する習慣がつきやすいと思います。
学部はどこでもいいので、学ぶ癖をつけてもらうことの方が重要だと思っています。

大学入学前か大学在学中の段階で、すでに税理士に興味を持っている人は、時間に余裕のある学生時代のうちから税理士試験の受験にチャレンジしましょう。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

監修者(弊社代表)の詳細はこちら

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