税理士になるには?資格取得までのステップをわかりやすく解説

税理士になるには?資格取得までのステップをわかりやすく解説

「税理士になるには、どれくらいかかる?」「おすすめの学部はある?」と気になる人もいるでしょう。税理士になるのは難しそうだと思うかもしれません。

本記事では、税理士になるには何をするべきか、資格取得までのステップを解説します。受験資格の変更点も紹介しているので、税理士試験に興味がある方はぜひ参考にしてください。

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税理士になるには?

税理士になるためには、以下の手順が必要です。

  • 税理士試験の受験資格を得る
  • 5科目に合格する
  • 2年以上の実務経験を積む
  • 日本税理士会連合会に登録する

それぞれ解説します。

税理士試験の受験資格を得る

税理士試験は以下のとおり、受験資格が定められています。

(1) 学識による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、 社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者成績証明書 (卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※1)を 1科目以上含む62単位以上を取得した者成績証明書 (大学3年次以上であることが確認できるもの)
(年次の記載がないものは大学3年次以上であることが確認できる書類(年次の記載がある在籍証明書等)も必要
※大学3年次以上であることが確認できない成績証明書が多いので注意してください)
一定の専修学校の専門課程(※2)を修了した者で、 社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者成績証明書
(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
及び
課程証明書
(当該専門課程が左欄の1及び2の要件を満たす課程であることについて都道府県知事等が発行した証明書を専修学校が原本証明したもの)
司法試験合格者所管官庁の合格証明書
公認会計士試験の短答式試験に合格した者(※3)公認会計士・監査審査会会長発行の「公認会計士試験短答式試験合格通知書」又は「短答式試験合格証明書」

(2) 資格による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
日商簿記検定1級合格者(※4)日本商工会議所発行の合格証明書
(合格証書は不可)
全経簿記検定上級合格者(※5)公益社団法人全国経理教育協会発行の合格証明書 (合格証書は不可)

(3) 職歴による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
法人又は事業行う個人の会計に関する事務(※6)に2年以上(※7)従事した者  職 歴 証 明 書
銀行、信託会社、保険会社等において、 資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上(※7)従事した者
税理士・弁護士・公認会計士等の 業務の補助事務に2年以上(※7)従事した者

※1 「社会科学に属する科目」には、改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「法律学に属する科目」に該当していた、法学、法律概論、日本国憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法等、また、「経済学に属する科目」に該当していた、(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済等の科目のほか、文系学部・理系学部を問わず、多くの学生に履修の機会があると考えられる、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等の科目が該当します。 また、その科目が「専門科目」ではなく、いわゆる「教養科目」や「共通科目」として位置づけられている場合であっても対象となります。⇒詳細はQ&Aを参照してください
※2 一定の専修学校の専門課程とは、1修業年限が2年以上2課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上であるものをいいます。 ⇒詳細はQ&Aを参照してください
※3 平成18年度以降の合格者に限られます。
※4 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
※5 公益社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限られます。)
※6 複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成事務等をいいます。
※7 異なる勤務先等の職歴は、通算して2年以上となれば受験資格があります。

引用元:国税庁「税理士試験受験資格の概要

上記に記載されている、学識・資格・職歴のいずれかの受験資格を満たす必要があります。なお、高卒者が受験資格を得る方法は下記の記事で解説しているため、気になる方はご覧ください。

【関連記事】高卒でも税理士になれる?試験の概要や受験資格もあわせて紹介

ただし、令和5年度の税理士試験から、簿記論と財務諸表論は誰でも受験が可能となりました。実際に、令和5年度の簿記論・財務諸表論の受験者数は、前年比120%以上となっています。

受験者数の前年比
簿記論財務諸表論
令和4年度12,888人10,118人
令和5年度16,093人13,260人
前年比124.8%131.0%
参照:国税庁「税理士試験

5科目に合格する

税理士試験は以下の11科目のうち、必須科目や選択科目を含めて計5科目に合格しなければいけません。

税理士試験の科目
科目選択/必須
簿記論必須科目
財務諸表論必須科目
所得税法選択必須科目
法人税法選択必須科目
相続税法選択科目
消費税法選択科目
酒税法選択科目
国税徴収法選択科目
住民税選択科目
事業税選択科目
固定資産税選択科目

ただし、科目合格制が導入されているため、一度の試験で5科目受験する必要はありません。1年に1科目ずつ勉強するなど、自分のペースで勉強に取り組めます。

また後述しますが、大学院に進学して論文を書くと一部の科目が免除されます。免除されるためには規定があるものの、合格に近づけるチャンスですので選択肢の一つです。

2年以上の実務経験を積む

税理士登録をしなければ、税理士として正式に認められません。税理士登録をするためには、試験合格に加えて租税または会計に関する事務の経験が2年以上必要です。

税理士事務所で働きながら試験勉強に取り組むと、合格してからスムーズに登録できるのでおすすめです。勉強との両立は容易ではありませんが、実務の内容が試験勉強に役立つ場合もあります。

弊所でも資格取得を目指している方を積極的に採用していますので、ぜひリクルートページをご確認ください。

日本税理士会連合会に登録する

試験合格・実務経験の条件を満たしたら、日本税理士連合会に登録申請をしましょう。承認されて税理士名簿に登録されると、税理士として活動できます。

税理士登録には、登録費用11万円と税理士会への入会金・年会費、支部への年会費がかかります。入会金や年会費は地域によって異なるため、詳しくは日本税理士会連合会の「税理士登録の手引」をご覧ください。

税理士になるにはどのような大学・学部がいい?

高校生で将来税理士になりたいと考える人もいるでしょう。税理士になるにはどのような大学・学部がいいのか、以下の観点から解説します。

  • 文理を問わずチャンスはある
  • 大学院に行くべき?

文理を問わずチャンスはある

もしも、税理士に関連のある分野を学習したいならば、法学部や経済学部、商学部などがおすすめです。大学の授業だけで試験に合格できるレベルには到達しませんが、履修科目によっては、会計や税法などの基礎的な知識は習得できるでしょう。

【関連記事】税理士になるための学部の選び方 大学時代に資格勉強を開始して、最短距離を目指そう

しかし、受験資格だけに着目すれば、文理を問わずチャンスはあります。なぜなら、令和5年度の試験から税法科目の受験資格が以下の内容に変更されたからです。(なお、簿記論・財務諸表論は会計科目、残りの9科目は税法科目と呼ばれます。)

  • 改正前)大学3年次以上の学生で”法律学または経済学に属する科目”を含め62単位以上を取得した者
  • 改正後)大学3年次以上の学生で”社会科学に属する科目”を含め62単位以上を取得した者

改正前までは、法学部や経済学部の在学生・卒業生以外は挑戦しにくい状況でした。しかし「社会科学に属する科目」に変更となったため、たとえば教育学や統計学などを1つでも履修していれば受験可能です。

よって、理系の学生でも税理士試験に挑戦しやすくなりました。

また、会計科目は受験資格が撤廃されたため、高校生でも受験できます。大学2年生までに会計科目に合格しておけば大学3年生以降は税法科目に集中できるので、在学中の税理士試験突破も夢ではありません。

大学院に行くべき?

大学院に進むと、税理士試験の科目が一部免除されると聞いたことがあるかもしれません。大学院で「税法」または「会計学」に属する科目の単位取得・修士論文の執筆などを行い要件を満たすと、税理士試験の科目が一部免除されます。

  • 税法→税法科目:2科目が免除
  • 会計学→会計科目:1科目が免除

税理士試験の各科目の合格率は10~20%で推移するため、大学院で免除を受けるほうが可能性は高いといえます。ただし、すべての大学院が対象ではないため、免除を受けられるか事前に確認しましょう。

また、税理士の新規登録者は、5科目合格者よりも試験免除者のほうが上回っています。

5科目合格者と試験免除者の割合
試験合格者試験免除者
平成29年度末781人1,375人
平成30年度末756人1,379人
令和元年度末756人1,411人
令和2年度末627人1,329人
令和3年度末628人1,440人
参照:会計コースWeb「全体登録者数の推移

試験免除者は税務署に一定年数従事した方も対象となりますが、税理士試験に5科目合格するのが主流ではないことがわかります。

科目免除が目的で、社会人になってから大学院に入る方も多くいるでしょう。試験と実務は別物ですし、本当の勉強は税理士になってからです。
試験に数十年かかってしまうならば、科目免除で短期に税理士登録されるほうがよいと思います。

税理士になるにはどれくらいかかる?

税理士になるまでにかかる時間は、人によってさまざまです。なぜなら、事前知識の有無や捻出できる勉強時間が異なるからです。

自分ならばどれくらいかかりそうか、以下の点から考えていきましょう。

  • 数年かかるのが一般的
  • 勉強目安時間から逆算する
  • 最終合格率は2%

数年かかるのが一般的

1年で5科目すべてに合格した人は、ほとんどいません。数年かけて勉強して合格を目指すのが一般的です。

なかには平均して10年ほどかかるというデータもあるため、長期戦を覚悟しましょう。

勉強目安時間から逆算する

最終合格までの年数は、1日にどれくらい勉強できるか、1年で何科目ずつ取り組むのかで異なります。

最終合格となる5科目クリアまでの勉強時間は、5,000~10,000時間程度と見積もりましょう。1日に何時間ほど勉強時間を確保できるかを考え、逆算するとよいでしょう。

勉強時間を3,000~4,000時間と紹介しているサイトも多くありますが、理論暗記の時間を省略して掲載されているので注意してください。科目によって目安時間は異なるため、勉強スケジュールを立てる際にお役立てください。

科目別の勉強目安時間
科目目安時間
簿記論500時間
財務諸表論500時間
所得税法1,200時間
法人税法1,200時間
相続税法1,000時間
消費税法600時間
酒税法300時間
国税徴収法300時間
住民税400時間
事業税400時間
固定資産税500時間

最終合格率は2%

直近5年間の税理士試験の受験者数と、5科目合格した人の割合を表にまとめました。

最終合格者数の割合
受験者数5科目到達者数最終合格率
令和元年29,779人749人2.51%
令和2年26,673人648人2.42%
令和3年27,299人585人2.14%
令和4年28,853人620人2.14%
令和5年32,893人600人1.82%

上記の表から、最終合格者は毎年2%前後で推移していることがわかります。長時間勉強したからといって、確実に合格できるとは限りません。

税理士試験は相当難しいですが、税理士になるメリットも大きいです。覚悟をもって税理士試験に挑戦してもらいたいと考えています。

独学で税理士になるには?

独学で税理士になるのは、以下の理由から非常に厳しいでしょう。

  • 法改正が頻繁にある
  • 市販のテキストでは対応しきれない
  • モチベーションが低下しやすい
  • 疑問をすぐに解消できない
  • 勉強のペースがわかりにくい

とくに税法科目は毎年法改正があるため、一人で対応するのは困難です。また、書店で販売されているテキストは1~2年前の情報をもとに作成されているため、注意してください。

ただし、簿記論・財務諸表論であれば法改正が少なく、市販テキストも揃っているため独学でも合格を目指せます。少しでも費用を抑えたいと考える方は、会計科目は独学で挑戦し、税法科目は予備校を利用するのが現実的です。

社会人が働きながら税理士になるには?

働きながら税理士試験に挑みたい方は、資格取得を支援している税理士事務所に勤務するのがおすすめです。収入が途絶える心配がなく、実務の内容が試験勉強に役立つこともあります。

また、試験前休暇や教材費の一部負担など、試験勉強と両立できる環境を整えている事務所もあります。ただし、長時間労働が横行している職場に入所すると勉強時間を捻出できないので、職場選びは慎重に行いましょう。

税理士になるために必要なステップを把握しよう

税理士になるには、税理士試験に合格かつ2年以上の実務経験があれば税理士登録が可能です。試験に合格したら所定の手続きを済ませて、税理士として活躍できます。

しかし、税理士試験の最終合格率は毎年2%ほどのため、決してやさしい試験ではありません。試験勉強も長期化するため諦めたくなるかもしれませんが、税理士になるメリットも多くあります。

税理士になりたいと考える方は、覚悟を持って試験勉強に臨んでください。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

監修者(弊所代表)の詳細はこちら

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