税理士業務はAIでなくなる?将来性やAI時代に活躍する方法を解説

税理士業務はAIでなくなる?将来性やAI時代に活躍する方法を解説

「AIが進化しているので、税理士はなくなる職業なのではないか」「税理士に将来性があるのか心配」と思う人もいるでしょう。

ゆくゆくはAIにすべての業務を奪われる、と不安になるかもしれません。

本記事では税理士業務とAIの関連性や、AI時代でも税理士が活躍する方法を解説します。税理士は今後なくなるのか、将来性に関する疑問解消にお役立てください。

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なぜ「AIで税理士がなくなる」と心配されるのか?

なぜ「AIで税理士がなくなる」と心配されるのか?

「AIで税理士がなくなる」と心配されるようになった理由はおもに以下の2つです。

その理由から確認していきましょう。

  • 論文が話題になったため
  • 税理士がいない国があるから

それぞれの理由から確認していきましょう。

論文が話題になったため

AIの登場で税理士がなくなると心配されたのは、AI研究者のマイケル・オズボーン氏が2014年に発表した、アメリカ国内の職業を対象とした論文が発端です。「10年後、今ある職種の半分が消えてなくなる」と話題を呼び、世界中に衝撃を与えました。

さまざまな職業が列挙されており、なかでも「税務申告書代行者」や「簿記、会計、監査の事務員」などの職種が、将来的になくなる職業として上位にランクインしました。

参考:Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?

この論文が話題になった結果、税務や会計などの業務を行う職業、つまり「税理士も将来的になくなってしまうのでは」と懸念されるようになりました。

税理士がいない国があるから

IT国家として注目を集めるエストニアは「税理士がいない国」といわれています。

なぜなら、エストニアは税制が非常にシンプルかつITが発展しているため、申告や納税がオンラインで簡単にできるからです。

実際、エストニアにも会計事務所はあり、完全に税理士がいないわけではありません。しかし、生活上のほとんどの手続きがインターネットで完結し、個人が税理士に依頼する必要性は薄れているとされています。

エストニアの実例により、ITやAIが発展すると、いずれは日本でも税理士が必要なくなると考える人も現れたのでしょう。

税理士業務はすべてAIに奪われるのか

税理士業務はすべてAIに奪われるのか

結論、AIにすべての税理士業務を奪われる可能性は極めて低いでしょう。なぜなら、日本の税制は複雑で、まだまだ専門家の意見が必要とされるケースが多いからです。

しかし、単純な事務作業や仕訳入力は、AIを活用すると自動化・効率化が可能です。

よって、定型業務はAIを活用して作業時間を減らし、人間にしかできない非定型業務に時間を充てる流れに、税理士の仕事は移行すると推測できます。

昔は紙に手書きで税務申告書を作成していましたが、今はPCで作成するため手書きはほぼ見なくなりました。AIの登場で同じことが起きるかもしれませんが、AIが税理士の仕事を奪うわけではありません。

AIを使いこなした税理士によって既存のやり方が塗り替えられ、これまでのような定型業務がなくなるのだと考えています。

AIが普及してもなくならない税理士業務

AIが普及してもなくならない税理士業務

AIが普及してもなくならないと考えられる税理士業務は、以下のとおりです。

  • コンサルティング
  • 複雑な仕訳
  • 最新税法への対応

いくらAIの性能が高まっても、上記のような業務は人間の力が求められるでしょう。それぞれ、詳しく解説します。

コンサルティング

コンサルティング業務は、人間の介在が不可欠です。なぜなら、顧客の潜在的なニーズは、AIでは十分に汲み取れないからです。

ChatGPTやチャットボットなどのコミュニケーションツールは登場していますが、人間の感情や微妙なニュアンスまでをAIに求めるのは難しいでしょう。

とくに、M&Aや事業継承などの業務では、複雑な感情に寄り添って進めることが求められるため、AIには不向きです。

AIは情報を処理するツールとしては有用であるものの、コンサルティングは専門家のアドバイスが求められます。

複雑な仕訳

複雑な仕訳も人間の力が欠かせません。

AIがデータ処理に活用されている一方で、例外的な判断が求められる会計の処理はまだまだ限定的です。

たとえば、一つの取引で複数の勘定科目を使用する場合は、人間の状況判断が必要です。また、経費として認められるかどうかも、購入目的や事業内容から慎重に判断しなければなりません。

たとえ記帳が自動化されても、最終確認は人間の目で行う必要があります。

最新税法への対応

税法は毎年改正されるため、AIが最新の情報に対応しきれない場合があります。

AIは過去のデータをもとに答えを導き出します。新しい情報に対応するためには、再度トレーニングしなければいけません。

最新の税法を反映させるプロセスに時間がかかるため、即座に対応するのは難しいとされています。

AI時代でも税理士として活躍する方法

AI時代でも税理士として活躍する方法

AIが浸透していく時代に、税理士として活躍する方法は以下の3つです。

  • AI・ITツールを使いこなして業務を効率化する
  • 専門知識・スキルを身につけて差別化する
  • 顧客の真のニーズを引き出す

AIが税理士の仕事を完全に奪う可能性は低いものの、求められる業務は変わってくるでしょう。それぞれのポイントを解説します。

AI・ITツールを使いこなして業務を効率化する

税理士業務を効率化するためには、AI・ITツールの積極的な活用が求められます。たとえば、日常的な事務作業や定型業務は、ツールを利用すると作業時間を短縮できます。

生み出した時間でクライアントと関わる機会を増やしたり、専門性の高いサービスを提供したりできるでしょう。税理士の業務量は膨大なため、多くの仕事をこなすスキルが求められます。

専門知識・スキルを身につけて差別化する

他の税理士と差別化するために、専門知識・スキルを習得するのも手段の一つです。AIを活用して効率化し、自分自身は高度なサービスを提供しようと考える税理士も増えると推測できるからです。

たとえば、相続やM&A、国際税務などは、少子高齢化やグローバル化の影響で今後も需要が見込まれます。専門性が高く、勉強や情報収集は不可欠ですが、得意分野として確立すれば大きな強みとなります。

顧客の真のニーズを引き出す

顧客の真の望みをくみ取り提案する能力は、AIは完璧ではありません。ヒアリング力やコンサルティング力は人間のほうが勝るため、AIと差をつけられるポイントです。

顧客から相談しやすい税理士だと思ってもらえると、たとえAIが発展しようとも頼りにされ続けるでしょう。また、税制は複雑化しているため、わかりやすく説明できる能力も重要です。

AI時代でも税理士に将来性はある?

AI時代でも税理士に将来性はある?

結論、AI時代でも税理士に将来性はあると考えれます。

将来性がある理由と考えられる理由は以下のとおりです。

  • 市場規模は伸びている
  • 税理士業界の高齢化が懸念されている
  • 税理士試験の受験者数が減っている

わかりやすく説明するので、今から税理士になりたいと考えている方はぜひご覧ください。

市場規模は伸びている

税理士業界の市場規模は成長しています。

その証拠として、総務省のデータによると、会計事務所の売上高は、以下のとおり年々伸びていることがわかります。

会計事務所 売上高
会計事務所の売上高
年度売上高
20131兆4549億円
20141兆5067億円
20151兆6650億円
20161兆6275億円
20171兆6514億円
出典:総務省「サービス産業動向調査

令和3年経済センサス-活動調査」の結果を確認すると、2020年の売上高は1兆9,022億円でした。

上記のデータは公認会計士事務所と税理士事務所を合わせた数値ですが、今後も業界の売上高は伸びていくと予想できます。

前述のとおり、マイケル・オズボーン氏の論文の影響で、10年度になくなる仕事の代表格の一つに税理士があり、その将来が心配されるようになりました。

論文が発表されてから10年が経過しましたが、税理士の業務は消えてなくなるどころか、拡大傾向にあります。

税理士業界の高齢化が懸念されている

税理士の市場規模は伸びているものの、業界の高齢化が懸念されています。2014年に発表されたデータではありますが、税理士の年齢層をまとめたのでご確認ください。

税理士の年齢層の割合
税理士の年齢層
20代0.6%
30代10.3%
40代17.1%
50代17.8%
60代30.1%
70代13.3%
80代10.4%
出典:日本税理士会連合会「データで見る税理士のリアル。

税理士の半分以上は60歳以上で、20~30代はわずか10%程度です。

税理士は年齢に関係なく実力で評価される傾向にあるため、若手でも十分に活躍するチャンスはあります。とくに、AIやITツールに抵抗が無い人材は、重宝されるでしょう。

税理士の平均年齢が高い理由は、以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。

【関連記事】税理士の平均年齢が60歳以上の理由は?若手が活躍するヒントも紹介

税理士試験の受験者数が減っている

税理士試験の受験者数は、以下のとおり減少しています。

税理士試験の受験者数
年度受験者数
201345,337
201441,031
201538,175
201635,589
201732,974
201830,850
201929,779
202026,673
202127,299
202228,853
202332,893
出典:国税庁「税理士試験

2023年度の試験から受験資格が緩和されたため増加しているものの、それでも10年前と比較すると減少しています。

ライバルが少ない今こそ、税理士試験に挑むチャンスです。なぜなら、税理士試験の合格基準は満点の60%以上とされていますが、実質は相対評価の試験だからです。

勉強の目安時間や学習のポイントはこちらで紹介しているので、気になる方はご覧ください。

【関連記事】税理士試験の勉強時間は?学習計画の立て方や勉強のポイントを紹介

AIを活用できる税理士になろう

AIを活用できる税理士になろう

AIの普及で税理士はなくなるのか解説しました。いくらAIが発展しても、税理士がなくなる可能性は極めて低いでしょう。

日本の税制は複雑なため、専門家のアドバイスが必要な場面はあります。また、税法は頻繁に改正されるので、AIが即座に情報をアップデートするのは難しいでしょう。

AIが直接的に税理士の仕事を奪うわけではありません。AIを使いこなした税理士が既存のやり方を塗り替えていき、これまでの税理士の仕事がなくなると考えられています。

AIを使いこなせる人材は税理士として活躍するチャンスです。税理士に興味がある方は、試験にチャレンジしてはいかがでしょうか。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
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働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

監修者(弊所代表)の詳細はこちら

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