税理士試験の簿記論と簿記検定の違いは?試験合格にかかる時間も解説

税理士試験の簿記論と簿記検定の違いは?試験合格にかかる時間も解説

「税理士試験の簿記論と、簿記検定ってどのように違うの?」「簿記2級に合格したから、税理士試験に挑戦したい!」と考える人もいるでしょう。

簿記論に合格するために、どれくらい勉強が必要なのかも気になりますよね。

本記事では、税理士試験の簿記論と簿記検定の違いを、わかりやすく解説します。税理士試験にステップアップしようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

なお、簿記検定には日商簿記・全経簿記・全商簿記の3つがありますが、知名度が高い「日商簿記」にしぼって説明しています。

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税理士試験(簿記論)と日商簿記の違い

税理士試験(簿記論)と日商簿記の違い

税理士試験の簿記論と日商簿記の違いを、以下の3つの観点から解説します。

  • 試験の概要
  • 合格率
  • 出題範囲

税理士試験全体の勉強時間や学習のポイントは、こちらの記事で解説しています。

【関連記事】税理士試験の勉強時間は?学習計画の立て方や勉強のポイントを紹介

試験の概要

税理士試験の簿記論と日商簿記の概要を、それぞれまとめたのでご覧ください。

税理士試験(簿記論)の概要
試験時期8月
受験資格なし(税法科目は学識・資格・職歴などで定めあり)
受験料(税込)1科目4,000円
直近の合格率23.0%(第73回)
勉強時間の目安500時間
日商簿記の概要
3級2級1級
試験時期2月・6月・11月
※ネット試験は随時実施
2月・6月・11月
※ネット試験は随時実施
6月・11月
受験資格なしなしなし
受験料(税込)2,850円4,720円7,850円
直近の合格率(統一試験)33.6%(第165回)11.9%(第165回)16.8%(第165回)
勉強時間の目安100~150時間250~350時間
※3級の知識がある場合
600時間
※2級の知識がある場合

まずは、試験時期の違いから確認していきましょう。

税理士試験は毎年8月に行われるため、年に1度しかチャンスがありません。一方の日商簿記は、3級と2級はネット試験が導入されており、何度でも受験可能です(1級は実施なし)。

簿記1級は統一試験のみですが年に2回開催されるため、受験できるチャンスは日商簿記のほうが多くあります。

受験資格は、簿記論・日商簿記のどちらともありません。

ただし、税理士試験の受験資格が無いのは簿記論と財務諸表論(会計科目)のみで、その他の科目(税法科目)を受験する場合は受験資格を満たす必要があります。

合格率

続いて、それぞれの過去5回分の合格率を確認していきましょう。

税理士試験(簿記論)の合格率
年度合格率
201917.4%
202022.6%
202116.5%
202223.0%
202317.4%
出典:国税庁「税理士試験
日商簿記の合格率(統一試験)
3級2級1級
161回45.8%26.9%10.1%
162回30.2%20.9%10.4%
163回36.5%24.8%
164回34.0%21.1%12.5%
165回33.6%11.9%16.8%
出典:日本商工会議所「受験者データ

簿記論の合格率は、10~20%台で推移しています。日商簿記の3級は30〜40%、2級は10〜20%、1級は10%台です。

3級は初学者向きのため、対策次第で十分に合格を狙えます。しかし、1級まで挑戦するとなれば、かなり難易度は上がります。

出題範囲

最後に、出題範囲の違いを見てみましょう。簿記論の出題範囲は次のとおりです。

複式簿記の原理、その記帳・計算および帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。

引用:国税庁「試験日程・試験科目について

続いて、日商簿記の出題範囲は以下のとおりです。

  • 簿記3級:商業簿記
  • 簿記2級:商業簿記・工業簿記
  • 簿記1級:商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算

簿記論と日商簿記1級の大きな違いは、原価計算の有無です。

税理士試験の簿記論は、日商簿記3級で約20~30%、2級で50%程度、1級では約90%を学習済みといわれています。

簿記2級に合格したら、次のステップに税理士試験を検討する人も少なくありません。また、日商簿記1級まで取得している場合はかなりの内容をカバーできているので、簿記論への挑戦はおすすめです。

税理士試験と簿記検定の関係

税理士試験と簿記検定の関係

税理士試験と簿記検定の関係を、次の2つの観点から解説します。

  • 税理士になるために簿記の資格は必要?
  • 簿記1級に合格すれば税理士試験は免除される?

税理士になるために簿記の資格は必要?

「日商簿記の資格がなければ、税理士試験は受けられない?」「日商簿記を受験せずに、いきなり税理士試験の簿記論に挑戦したい!」と思うかもしれません。

税理士になるためには日商簿記の資格が必要なのか、解説します。

なくても税理士は目指せる

日商簿記の資格を取得していなくても、税理士は目指せます。なぜなら、税理士試験の受験資格は学識・資格・職歴のいずれかを満たせばよく、簿記検定の合格は必須ではないからです。

前述のとおり、会計科目は誰でも受験できるようになったものの、税法科目には受験資格が定められています。令和5年度の試験から受験資格が改正されたため、確認しておきましょう。

(1) 学識による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、 社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者成績証明書 (卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
大学3年次以上で、社会科学に属する科目(※1)を 1科目以上含む62単位以上を取得した者成績証明書 (大学3年次以上であることが確認できるもの)
(年次の記載がないものは大学3年次以上であることが確認できる書類(年次の記載がある在籍証明書等)も必要
※大学3年次以上であることが確認できない成績証明書が多いので注意してください)
一定の専修学校の専門課程(※2)を修了した者で、 社会科学に属する科目(※1)を1科目以上履修した者成績証明書
(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
及び
課程証明書
(当該専門課程が左欄の1及び2の要件を満たす課程であることについて都道府県知事等が発行した証明書を専修学校が原本証明したもの)
司法試験合格者所管官庁の合格証明書
公認会計士試験の短答式試験に合格した者(※3)公認会計士・監査審査会会長発行の「公認会計士試験短答式試験合格通知書」又は「短答式試験合格証明書」

(2) 資格による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
日商簿記検定1級合格者(※4)日本商工会議所発行の合格証明書
(合格証書は不可)
全経簿記検定上級合格者(※5)公益社団法人全国経理教育協会発行の合格証明書 (合格証書は不可)

(3) 職歴による受験資格

受験資格を得られる方証明書類
法人又は事業行う個人の会計に関する事務(※6)に2年以上(※7)従事した者



銀行、信託会社、保険会社等において、 資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上(※7)従事した者
税理士・弁護士・公認会計士等の 業務の補助事務に2年以上(※7)従事した者

※1 「社会科学に属する科目」には、改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「法律学に属する科目」に該当していた、法学、法律概論、日本国憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法等、また、「経済学に属する科目」に該当していた、(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済等の科目のほか、文系学部・理系学部を問わず、多くの学生に履修の機会があると考えられる、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等の科目が該当します。 また、その科目が「専門科目」ではなく、いわゆる「教養科目」や「共通科目」として位置づけられている場合であっても対象となります。⇒詳細はQ&Aを参照してください
※2 一定の専修学校の専門課程とは、1修業年限が2年以上2課程の修了に必要な総授業時間数が1700時間以上であるものをいいます。 ⇒詳細はQ&Aを参照してください
※3 平成18年度以降の合格者に限られます。
※4 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
※5 公益社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限られます。)
※6 複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成事務等をいいます。
※7 異なる勤務先等の職歴は、通算して2年以上となれば受験資格があります。

引用元:国税庁「税理士試験受験資格の概要

改正前は、法学部や経済学部などを卒業していなければ、受験するのが難しい状況でした。しかし、現在は文学部や心理学部、理系学部を卒業していても受験できる可能性があります。

ただし、高卒の方は学識による受験資格が無いため、資格か職歴の要件を満たす必要があります。高卒で税理士になる方法は下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

【関連記事】高卒でも税理士になれる?試験の概要や受験資格もあわせて紹介

簿記の知識が必要になる

簿記検定を受けずに、いきなり税理士試験の簿記論に挑戦するのも手段の一つです。最短で税理士になりたいと考える場合は、日商簿記の勉強をしない人もいるでしょう。

ただし、簿記の知識は税法科目や税理士業務でも基礎となるため、土台を疎かにしてはいけません。

また、簿記2級を取得していると、就職・転職の点からもメリットはあります。なかには、日商簿記2級を取得している人を条件に人材を募集する税理士事務所や一般企業もあるからです。

上記の観点からも、簿記3・2級を取得するのはおすすめです。

簿記1級に合格すれば税理士試験は免除される?

簿記1級を取得していても、税理士試験の科目が免除されることはありません。

税理士試験の科目が一部免除されるのは、大学院に進学して論文を執筆した場合や、一定期間税務署に勤務した方です。日商簿記1級に合格しても、税理士試験の科目免除者の対象にはならないので注意しましょう。

税理士試験(簿記論)の合格にかかる勉強時間

税理士試験(簿記論)の合格にかかる勉強時間

税理士試験の簿記論に合格するまでの勉強時間の目安は以下の通りです。

  • 簿記の知識なし:1,000時間
  • 簿記2級合格済み:700時間
  • 簿記1級合格済み:500時間

簿記論の勉強時間は450~500時間と紹介するサイトも多いですが、鵜呑みにしてはいけません。事前の知識量も違うため、簿記の知識が無い方や簿記1級に合格していない場合は、多めに見積もるとよいでしょう。

税理士試験の簿記論は独学でも合格を目指せる?

税理士試験の簿記論は独学でも合格を目指せる?

税法科目と違い、簿記論は独学でも合格を目指せる科目ではあります。なぜなら、法改正が少なく、市販テキストも揃っているからです。

しかし、決して簡単なわけではありません。何十年勉強しても合格できない可能性もあるため、独学で挑むかどうかは慎重に選択しましょう。

簿記論の勉強方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】税理士試験の簿記論とは?合格率や勉強時間、勉強方法のコツを紹介

簿記検定から税理士試験にステップアップしよう

簿記検定から税理士試験にステップアップしよう

税理士試験の簿記論と日商簿記検定の違いや関係を解説しました。

簿記論と日商簿記は学習内容が重複している内容もあるため、簿記検定に合格したら税理士試験にステップアップするのもおすすめです。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。

また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

監修者(弊所代表)の詳細はこちら

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